経絡・経穴についての私見
―学び・臨床・体験を通じて深まる“生きた東洋医学”の構造―
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1. 経絡と経穴は不可分の関係である
経絡と経穴は本来セットである。
経絡が鉄道の「レール」、経穴が「駅」であると例えると、経絡だけを切り離して考えるのは無理がある。経絡のみを取り出して施術の対象とする考え方もあるが、これは本質を見失っている。
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2. 経絡・経穴は時代と共に再構築されてきた
『黄帝内経』『難経』『鍼灸甲乙経』『銅人経』などの古典に見られるように、経絡・経穴の概念は一定ではなく、時代によって再編成され続けている。
また江戸時代後期には腑分け（解剖）が行われ、その成果が経絡・経穴の理解に反映された形跡もある。
歴史的には理論化のため、強引に整合性が図られたり、ある種の創作的解釈が行われてきた可能性も否定できない。
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3. 現代では解剖学・生理学の視点が加わっている
現代の経穴の位置は、解剖学的な視点で整理されつつある。
神経叢・筋膜・血管・感覚受容器などとの対応関係も指摘されている。
一方、経絡については、機能的な性質（流れ・連関）があるため、生理学的な解釈が試みられているものの、依然として不明な点が多い。
筆者は経絡・経穴を神秘的に捉える必要はなく、現代医学的な視点で再構築できるのであれば、その方向性を肯定的に捉えている。
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4. 経絡・経穴は臨床と体験を通じて形成される
書に示された経絡・経穴はあくまで概念であり、それを実践で役立つものとするには臨床経験が不可欠である。
術者は、
• 書を読み、知識を得る
• 師や先輩から学ぶ
• 臨床現場で実際に用いる
• 体感を通じて検証する
というプロセスを繰り返し、術者自身のなかで経絡・経穴を具体的なものとして構築していく。
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5. 経絡・経穴は人を通じて深化する
経絡・経穴の感覚や認識は術者ごとに微妙に異なる。
その差異は単なる個人差ではなく、術者の経験・感覚・技量の深まりを示すものと考えられる。
優れた術者ほど臨床経験を通じて、経絡・経穴をより明確に感知し、精緻に活用している。
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6. 総括：経絡・経穴は“個々の術者によって育てられる知”である
経絡・経穴は、唯一の正解を持つ静的な知識ではなく、術者がそれぞれの臨床経験や身体感覚を通じて育てる動的な知である。
そのため多様な解釈が生まれることはむしろ自然であり、個々の臨床現場に即した“生きた知識”として存在する。
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結論：揺れ動く概念の中で、自分なりに深めていく姿勢こそが重要
経絡・経穴は明確に統一された概念ではないため、どれが正しいかと迷い、振り回される術者も少なくない。
しかし重要なのは、理論をただ受け入れることではなく、「学ぶ・知る・感じる・体験する」ことを通じて、術者自身が臨床の中で経絡・経穴を自分なりに深めていく姿勢である。
正しい・間違っていると否定したり、一つの論や書に固執したりすること、また現代の医療や解剖学・生理学との統合を否定・拒絶したりすることはナンセンスである。なぜなら経絡・経穴は常に、その時代の最先端の医学的知見とのアップデートを繰り返してきた歴史を持つからである。
理論は臨床経験と実践に裏付けられてこそ真の意味を持つ。
術者一人ひとりが、日々の臨床を積み重ねながら、経絡・経穴という概念と実践の接点を築き続けることが、伝統医学を現代においても生きた医学として継承していく鍵となる。
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